硬膜動静脈瘻
硬膜に発生した動静脈の短絡で流入動脈の硬膜動脈が静脈洞に流入し、通常の流出静脈や脳表静脈に流出します。原因は不明で、頭部外傷後や術後に発生します。好発部位は横・S状静脈洞(63%)と海綿静脈洞(26%)で、欧米では前者、我が国では後者が多く、後者は圧倒的に女性に多くみられます。好発年齢は40〜60 歳で、稀に脊髄にも発生します。動脈血が瘻を介して静脈洞に流入するため、静脈洞の圧が上昇します。そのため元々流入する静脈が鬱滞・逆流することで症状がおこります。
海綿静脈洞部では、眼球突出、結膜充血、眼窩部血管雑音、海綿静脈洞症候群(外転神経麻痺など)が、横・S状静脈洞部では血管性耳鳴、頭痛、うっ血乳頭が、脊髄では進行性脊髄症状(対麻痺, 膀胱直腸障害)が認められます。MRIとMRAで上眼静脈や皮質静脈の拡張、皮質下出血、静脈性梗塞、海綿静脈洞に血流信号、脊髄周囲の拡張した静脈や浮腫が認められます。片側の症状でも両側の6血管に脳血管撮影を行います。治療は、静脈洞塞栓術が第一選択で、流入動脈塞栓術は補足的な役割であり、無効例には放射線治療や静脈洞切除術が行われます。