不随意運動症
本人の意思と無関係に出現する異常な運動の総称で、主として大脳基底核、脳幹、小脳を中心とした錐体外路系の障害によって出現します。律動的なもの、運動の速度が速いものや遅いもの、画一的な運動が繰り返されるものや不規則な運動が雑然と連続して起こるもの、ごく一部(顔面、四肢、体幹など)に生じるものから全身に及ぶものなど、様々なパターンがあります。
診断ですが、振戦は律動的なふるえで、手指・下肢・頭部・声帯・体幹にみられ、静止時・姿勢時・運動時・本態性振戦があります。ミオクローヌスは中枢神経起源の不規則性筋れん縮、律動性筋れん縮で、突発的で素早いピクッとした運動です。舞踏運動は、突然始まり、不規則で目的のない、速く踊るような奇妙な運動です。アテトーゼは虫が這うような運動で、一定の肢位を保持できずに四肢体幹を不規則かつ非律動的にゆっくり動かす運動です。脳血管障害や周産期異常による線条体障害が原因となります。バリスムは上下肢を近位部から投げ出すような激しく急激な反復運動で、脳血管障害による視床下核病変により一側性に生じます。ジストニアは筋肉の緊張異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態で、大脳基底核の異常によっておこります。
パーキンソン病は中脳の黒質で作られる神経伝達物質の一つであるドパミンが減少して様々な症状がゆっくりと進行する神経変性疾患です。病理学的には黒質・線条体ドパミン性神経細胞の変性とレビー小体の出現が特徴です。
診断・症状は①運動系症状(振戦、固縮、無動、姿勢障害)、②自律神経系症状(便秘、排尿障害、立ちくらみ、発汗異常)、③精神症状(抑うつ状態)がみられます。薬物療法としてレボドパ、ドパミン受容体刺激薬、抗コリン薬、ドパミン放出促進薬、ノルアドレナリン補充薬を使用します。薬剤抵抗性の症状が生じる、あるいは副作用のため服薬困難な場合には、定位脳手術による脳深部刺激療法を検討します。振戦には視床、他の進行性PDには淡蒼球や視床下核、すくみ足や姿勢障害には脚橋核が選ばれます。振戦を呈する症例では、収束超音波療法を選択する場合があります。