脳血管性認知症
脳血管障害に関連して出現した認知症を総称したものです。皮質性、皮質下性、戦略的部位の単一病変によるもの、低灌流性、脳出血性に分けられます。高頻度でみられる皮質下性の多発性ラクナ梗塞によるものでは、精神運動遅延、遂行機能障害など前頭葉機能低下による症状が目立ちます。簡易知能評価の得点が正常範囲でも、意欲・自発性低下、遂行機能障害や行動異常のために認知症と診断される場合があります。精神症状は動揺しやすく、夜間興奮、せん妄、抑うつなどを伴います。また、神経症候を伴うことも特徴で、仮性球麻痺、血管性パーキンソン症候群、腱反射の亢進と左右差、頻尿、尿失禁などがみられます。さらに、血管障害の危険因子(高血圧、糖尿病、心房細動など)や他部位の血管障害(心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症など)を合併します。原因としては、脳梗塞が大部分を占めますが、頭蓋内出血や低灌流状態によるものも含まれます。
診断にはCT、MRIなどの形態画像と、SPECT、PETなどの機能画像が必要です。そして認知症であり、脳血管障害があり、両者に因果関係があることの3点が要諦です。
本症の予防は、脳血管障害の一次予防と二次予防につきます。治療は中核症状に対しては、本症への保険適応はありませんが、アルツハイマー型認知症合併例にはドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が投与されます。周辺症状に対しては様々な薬剤があり、抑うつには抗うつ薬のSSRIが第一選択です。不安や焦燥感にはクロチアゼパム、府民にはゾルビデムやゾビクロンなどが、自発性低下や情緒障害にはニセルゴリン、意欲・自発性低下には塩酸アマンタジン、せん妄にはリスペリドン、塩酸チアプリド、クエチアピンなどを用います。